大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(オ)393 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人鎌田豊吉、同世良田進の上告理由第一点について。

原判決は、所論乙第五号証の上告人関の押印なき土地使用契約書のみで本件土地

につき一時使用の契約が成立した事実を認定したものではなく、右書証のほか被上

告人本人の供述等諸般の証拠を綜合して右事実を認定した上、乙第五号証が未完成

のものであつたとしても右認定を妨げるものではないと判示しているのである。そ

して原判決援用の被上告人本人の供述によれば、前記一時使用の賃貸借を認定でき

ないことはなく、また右供述と乙第五号証を綜合すれば、同号証が未完成に終つた

にせよ少くとも草案として作成された事実が窺われるので、これらの証拠により原

判示のように契約が成立したとの判断を導きえないことはない。それ故、原審が同

号証を他の証拠と綜合して前記事実を認定したからとて採証の法則に違背するとこ

ろはない。論旨援用の昭和五年の大審院判例は「買主の署名捺印を欠く売渡証によ

つて売買成立を是認しなければならぬものではない」という趣旨のものであり、ま

た同四年の大審院判例は末完成の証書だけを資料にして契約内容を認定した場合に

関するものであるから、これらの判れはいずれも本件に適切でない。その他の論旨

は、原審が適法にした証拠判断を非難するか、原審の認定と異なる事実を前提とし

て原判決を攻撃するに過ぎないので採用できない。されば、原判決には所論の違法

はなく、論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は、上告人関が本件土地の一部につき戦時罹災土地物件令(以下物件令と

いう)四条一項による賃借権を取得した事実を認めたけれども、右の賃借権は原判

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示の一時使用の賃貸借の成立により同上告人がこれを放棄したものと認むべき旨判

示したのであつて、この判示は正当と認められる。従つて、物件令四条一項による

賃借権の存しない以上、罹災都市借地借家臨時処理法(以下処理法という)三二条

にもづく賃借申出の権利がないことはもちろん、その権利を前提とする買取請求権

もまた存しないものといわなければならない。そして、原判決は上告人の処理法三

二条の抗弁を排斥したのであるから、同条二項の買取請求権の主張をも排斥した趣

旨と解すべきである。それ故、原判決には上告人の主張につき判断を遺脱し若しく

は理由を付しない等所論の違法があるものとはいえない。また、民法六〇八条にる

有益費償還請求権については、上告人が原審において何ら主張しなかつたのである

から、原審がこれにつき判断を与えなかつたことは当然であつて、原判決には所論

の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 垂 水 克 己

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